自己保持回路とは

ラダープログラムを組む際に自己保持回路をよく使用します。
自己保持回路とは、「電源がONした状態を自ら保つ回路」のことです。
この自己保持回路は、電気制御を実行するうえで基本中の基本です。

極端に言えば、どんなに複雑な電気制御システムでも、この自己保持回路の集合体と考え手も過言ではないので、電気制御に携わるすべての人は、この「自己保持回路」についてはきちんと理解する必要があります。

下図、参照①を見てください。

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自己保持回路がない場合、運転ボタンを押すとコンベアが動き、ボタンを放すことでコンベアが停止します。
人が操作する時のみ動けば良いのであれば、この方法でも問題はありません。
しかし人が手を放しても、コンベアが継続して運転されるよう制御する装置としては、十分ではありません。

そういった場合に、自己保持回路を利用することで、参照①の商品をコンベアでA地点からC地点に搬送する際の行程を①~③とした場合

①運転ボタンを押すと、商品がA地点からB地点にコンベアで搬送されます。

②B地点に商品が到着すると、10秒間停止してからC地点にコンベアで搬送されます。

③C地点に商品が到着するとコンベアが停止します。

運転ボタンを押すとコンベアが動き、ボタンを放しても①~③の制御を行います。
初めに説明した『電源がONした状態を自ら保つ』とは人手の有無に関係してきます。

自己保持回路がない場合

運転ボタンを押し続けなければならず、担当の人はその場から移動できないので、他の作業ができません。

自己保持回路がある場合

運転ボタンを押す人は押した後であれば自由に移動できるので他の作業もでき、業務を効率的に行なえます。

つまり自己保持回路があれば、一度運転ボタンを押すだけで稼働することができるのです。
この自己保持回路を応用する事により、機械は自動運転が可能となり、作業者が少人数でも生産性を上げる事が可能になります。

 

基本の自己保持回路を組む

それでは順を追って基本の自己保持回路の説明と回路を作成していきましょう。

【例題1】

・押しボタンを押すと入力デバイスX1(a接点)がONし、ランプを点灯させるための出力デバイスY1がONする回路を作成して見ましょう。
条件:押しボタンはa接点型モーメンタリ式のスイッチ(※1)を使用しています。

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図 1

図1の回路では、押しボタンを押している間のみX1はONし、Y1もX1がONしている時にのみON(ランプが点灯)することになります。

 

【例題2】

では、押しボタンを1度押しただけで、ランプが点灯し続けるためにはどうすれば良いでしょうか。
ここで自己保持回路の出番です。ランプ用出力デバイスY1が自らONし続けるためには、同じY1の接点(a接点)をor回路として組んでましょう。

・自己保持回路で作成する

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図 2

図2の回路を組むことにより、押しボタンを押すと入力デバイスX1がONし、ランプ用出力デバイスY1がONすると同時に、Y1接点(a接点)もONするため、押しボタンを放してX1がOFFしてもランプが点灯し続けます。(図3参照)

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図 3

図3のように「Y1がON(ランプが点灯)している限り、Y1接点もONし続ける。」
この状態を自己保持回路と言います。

さっと説明してしまいましたが、この記事を読んで頂いている方の中には「なぜ押しボタンを押しX1がONするとY1接点(a接点)もONするのか?」という疑問が出てくる方もいるかと思います。

ラダープログラム上では出力がONした際、その出力と同じデバイス(例題1ではY1のこと)であれば動作がシンクロします。
出力Y1がONしたのならばラダープログラム上にある全てのY1接点(a接点)もONします。
逆に出力Y1がOFFしたら、全てのY1接点(b接点)はOFFになります。

しかし、図2と図3の回路には問題があります。
それはこのままではランプを切る方法がありません。

ランプを切るために、自己保持している間、切り用押しボタン入力デバイスX2としてb接点型モーメンタリ式スイッチ(※2)を追加することでランプを切ることができます。(図4・図5)

 

図 4

図 4

 

図 5

図 5

図5は切り用押しボタンを押すと入力デバイスX2はOFFし、ランプ用出力デバイスY1への回路が遮断されるので、Y1(出力)がOFFします。
出力がOFFすることは自己保持していたY1接点(a接点)もOFFします。

自己保持回路を理解する重要ポイントは

① スイッチを押して出力がONする。
② スイッチを放しても出力がONの状態を保っている。
③ 回路を切るための手段が必要である。

上記の3つの条件がある回路こそが自己保持回路の基本構造になります。

※1:a接点型モーメンタリ式スイッチとはボタンを押して電源ON、ボタンを放して電源OFFするスイッチです。
※2:b接点型モーメンタリ式スイッチとはボタンを押して電源OFF、ボタンを放して電源ONするスイッチです。

制御技術G 古賀