「PLCで制御される入出力Bit信号機器」ではONかOFFのデジタル信号でのPLCの入出力について説明いたしましたが、工場内ではアナログ信号機器からの入出力も多くあります。
アナログ信号をPLC(シーケンサ)に取り込むニーズとしては多くあります。
生産機械における温度(製品温度を取り込み生産状況を監視)や圧力(エアーなどの気体、水などの液体の状態監視)等、そしてコンベアなどのモーターの回転数を変化させる為のボリュームスイッチからの電圧値(ボリューム最小値で0V、最大値で10Vなど)等です。
コンベアのモーターを例とすれば、ON-OFFスイッチで制御事を考えると低速・中速・高速など段階的な速度制御となります。
それを上図のようなボリュームスイッチなどで制御すれば無断階変速となる訳です。
このように生産機械には多くのアナログ信号を取り込む為のセンサーであったりスイッチ類の機器が設置されています。
次に出力側ですが、PLC(シーケンサ)はアナログ信号で出力している訳ではありません。
それはPLCはCPUを持ったコンピュータですので1か0のディジタル信号しか認識できません。よって出力する際はアナログ的な波形をディジタル信号の組み合わせで波形を擬似的に作り連続出力し、いかにもアナログ波形のような信号を出力しているようにしています。
これを利用しているのがインバータです。
コンピュータで計算し適切な電圧値を交流電源のようにディジタル信号で出力し、エアコンや洗濯機などのモーターにおける回転数を制御しています。
つまりアナログ入力では、PLC(シーケンサ)に取り込んだアナログ値をA-D変換ユニットでその変化量をディジタル化しプログラム内で使用します。
そしてアナログ出力では計算された数値をD-A変換ユニットでディジタル信号の連続出力で擬似的にアナログ波形化しモーターの回転数などの制御として使用します。
アナログ信号機器からの入力
まずはアナログ入力について説明します。
PLC(シーケンサ)にアナログ信号を入力するには、その為の専用ユニットが必要になります。例えば、三菱シーケンサQシリーズですと、Q64ADやQ68ADVなどがアナログ信号を入力する為のユニットとなります。
画像:MELSEC-Q68ADV
三菱電機 製品情報より
これらのユニットは、「アナログ-ディジタル変換ユニット」という名称です。
「あれ?アナログ入力ユニットではないの?」と疑問を持たれる方もいるかも知れませんが、PLC(シーケンサ)はCPUを持つコンピュータですから最終的には1か0のディジタル信号に認識させる必要があるからです。
その為、外部からのアナログ信号、例えば4~20mAの電流信号や0~10Vの電圧信号(センサーなどの機器により違います)などを制御として使用する前に、例えば0~4000digitというディジタル信号に変換することで、ラダーなどのプログラムで使用することができるのです。
例えばある機械に取り付けられた温度センサーの温度検出範囲が0~500℃であり、そのセンサーのアンプユニットは0~500℃の温度変化を、4~20mAの電流変化にして外部へアナログ信号として出力します。
この信号線を接続したQ68ADVユニット(予め4~20mAのアナログ信号を0~4000digitに変換するというような初期設定が必要)は、0~500℃の温度変化信号を0~4000digitのディジタル信号に変換し、各ユーザーはラダープログラム内で0~4000digitという値を0~500℃とする変換式を作成してラダープログラム内でようやく温度データとして使用できます。
このようにPLC(シーケンサ)内で設定された入力デバイスの値をモニターすると0~4000という値で変化します。
その値を0digitなら0℃、2000digitなら250℃、4000digitなら500℃とすれば温度変化として認識できます。
またアナログ入力としてはボリューム(可変抵抗器)を使用した例もあります。
まずはボリューム(可変抵抗器)の仕組みを説明します。
図1
画像:ボリューム(可変抵抗器)
図2
ボリューム(可変抵抗器)の端子番号例
図3
上図のボリューム(可変抵抗器)の端子それぞれに配線します。
端子3にはDC10V、端子1にはDC0V、端子2にはボリューム端子です。
アナログ-ディジタル変換ユニットには配線AとBを接続します。
上図のように配線され、「アナログ-ディジタル変換ユニット」に配線AとBを接続し、ユニットには0~10Vの電圧が掛かるようにします。この0~10Vのアナログ値をPLC(シーケンサ)では内部的に0~4000digitとする設定をします。つまりボリュームを回すと入力されるデータが0~4000digit間で変化する訳です。
アナログ信号機器への出力
アナログ出力について説明します。
PLC(シーケンサ)がアナログ信号を出力するにはアナログ入力と同様にその為の専用ユニットが必要になります。
例えば、三菱シーケンサQシリーズですと、Q64DANやQ68DAVなどが使用されます。
画像:MELSEC-Q68DAV
三菱電機 製品情報より
これらのユニットは「ディジタル-アナログ変換ユニット」という名称です。
このユニットの使用目的は、「アナログ-ディジタル変換ユニット」と逆になります。つまりPLC(シーケンサ)内のラダープログラムなどで作成された数式または外部信号により得られたディジタル信号をアナログ変換し、その配線をインバータなどのユニットに接続しモーターの速度制御などに使用されます。
例えば、ある機械の操作盤にボリューム(可変抵抗器)があり、このボリュームを回すとコンベアの速度(モーターの回転)が変化するという仕組みがあるとします。
ボリューム(可変抵抗器)を利用し、いかにコンベアのモーターの回転を制御するかの説明をします。
前項でボリュームの回転位置によりデータ値を0~4000digit間で変化するようにできると書きました。
このデータ値を今度は「ディジタル-アナログ変換ユニット」へ出力させるようにすると、ユニットの種類にもよりますが、0~5Vや4~20mAのアナログ値として出力させることが可能になります。
その「ディジタル-アナログ変換ユニット」からのアナログ出力される配線をインバータに接続し、インバータ側の設定をアナログ入力で速度指令する点や、5Vや20mAの最大値では設定された最高周波数(例えば60Hz)にすれば、インバータから制御されるモーターはボリュームの回転位置により、ボリューム最小位置で0Hz(停止)、最大位置で60Hz(最高周波数)まで回転速度を速めることが可能になります。
PLC(シーケンサ)の入出力ではBit信号のほかにアナログ信号があり、アナログ信号の機器も変換ユニットを使用することで、PLC(シーケンサ)に組み込むことができるのです。
制御技術G 人見